関節リウマチは、全身におこる関節炎で、従来慢性の炎症性疾患と考えられてきましたが、発症後早期に骨破壊が進行し、急性あるいは亜急性の炎症性疾患と認識されるようになってきています。関節リウマチの根本的な原因は不明ですが、もともとの素因に何らかの外的・環境要因によって自己の免疫状態が異常を起こし、全身の関節に炎症が引き起こされる状態と考えられます。
この疾患を放置しておくと関節を形成する骨、軟骨、腱が破壊され、関節の動きが制限されたり、変形したりします。このような変化は不可逆性(一度おこると元に戻らない)で、日常生活に支障を生じるようになってきます。また骨以外に肺などの内臓疾患を合併する全身疾患です。
関節が炎症で腫れており、血液検査で炎症所見(CRP、血沈)、抗体検査(抗CCP抗体、リウマトイド因子 RF: rheumatoid factor)をチェックします。レントゲンは、軟骨や骨の変化があれば診断がしやすくなるのですが、発症早期では変化が見られません。MRIや関節エコー検査では、診察やレントゲンで捕らえられない軟骨、骨、関節包をなす滑膜の変化が検知され早期の診断に有用であることがあります。
■スコアリング(A~Dを合計)
* スコア 6/10以上で、RAと分類してよい
2010 Rheumatoid arthritis Classification Criteria: Arthritis & Rheumatism 62(9) 2010
この分類基準を参考に診断に至りますが、まだ症状が出揃わずその時点では診断に至らない場合もあります。またスコアを満たさなくても臨床所見から関節リウマチと診断することもあります。
いずれにしても、個人差が多い疾患で、薬の内容や調整は人によってバラバラです。「あの人が良くなったと聞いたので私もその薬が欲しい」ということを時々聞きますが、個人の状態に応じて処方するので、必ずしも同じように効果が出るわけではありません。場合によっては、いわゆる副作用が強く出る可能性もあります。
■リウマチ性多発筋痛症
肩や腰など四肢近位部の疼痛と朝方のこわばりを訴え、採血で炎症反応の上昇を伴うが、筋酵素は上昇しない。1:2で女性に多く、70歳代をピークに年配者に多い。
関節破壊は伴わず、ステロイド治療に良好に反応する。
■RS3PE症候群
予後の良い(Remitting)、リウマチ因子陰性(Seronegative)、対称性(Symmetrical)、手背足背の圧痕浮腫を伴う滑膜炎(Synovitis With Pitting Edema)の頭文字から命名。
手背の腫脹はボクシンググローブハンドとも呼ばれ、高齢発症、急な発症、骨びらんはない、炎症反応の上昇を伴う、疼痛のない手関節・指関節の運動制限を伴う、HLA-B27・CW7・DQW2陽性率が高い特徴がある。
ライター症候群や乾癬性関節炎などの反応性関節炎でもソーセージ様の手指の腫脹がみられることもあるが、非対称性である事が多い。ステロイドによく反応し、寛解する。
■リウマトレックス
リウマトレックスは関節リウマチ治療薬として世界で最も多くの患者さんに使用されている最も標準的な抗リウマチ薬で、ほとんどの関節リウマチの患者さんに投与が考慮されるべき基本的な薬剤です。一人当りの投与量は年々増加しています。単独で使用されるだけでなく、他の薬剤と組み合わせて使用する併用療法も一般的です。特に生物学的製剤はその有効性を上げる観点から、リウマトレックスと併用することが望ましいと考えられています。近年の関節リウマチ治療の著しい発展に最も寄与した治療薬と言えます。
主な副作用は、肝機能障害、口内炎や胃腸障害などです。腎障害のある人も要注意です。多くの場合、これらの副作用は葉酸を併用することである程度抑制できます。葉酸はリウマトレックスを服用した1~2日後に週に1回だけ服用するのが一般的です。稀に間質性肺炎や白血球や血小板が急減する骨髄抑制を認めることもあります。したがって、定期的な受診と血液検査、レントゲンやCT検査をお願いしています。
間質性肺炎は特殊な肺炎で、リウマチ患者さんで発症しやすいことが知られています。特にリウマトレックスを服用中の患者さんでそのリスクが上がると考えられており、数百人に一人の割合で発症すると考えられています。通常は入院治療を要し、重症化すると手遅れにもなりかねません。発熱、から咳、息苦しさなどが特徴で、ためらわず早めに受診してください。
口内炎は大きな合併症の前駆症状となることがあるので、多発的に発生したらこれもすぐに受診をして下さい。
日本で開発された免疫抑制剤で、臓器移植後の拒絶反応を抑制する薬剤として世界中で使用されています。2005年4月に関節リウマチの適応が追加されました。
他の抗リウマチ薬の効果を高める可能性があることが注目されており、併用療法で使われることも少なくありません。比較的高価な薬剤ではありますが、近年使用は増加傾向で、個人的には適応が承認された時より多くの関節リウマチ患者さんに使用しています。副作用は腎障害、耐糖能異常(糖尿病、高血糖)が起こる事があります。
■リマチル
日本で開発された抗リウマチ薬で、アザルフィジンENと並び、日本では最初に使われることもある抗リウマチ薬の一つです。主な副作用は、皮疹、蛋白尿で、定期的な尿検査は必須です。比較的キレのいい薬剤と考えます。
■アザルフィジンEN
抗リウマチ薬の一つです。リウマトレックスと併用することも少なくありません。主な副作用は、薬剤によるアレルギー症状とされる皮疹や発熱、肝機能障害、胃腸障害などで、服用開始後比較的早い時期に起こることが多いですが、しばらくたってから起こることもあります。稀に骨髄抑制という血液の異常を認めることがありますので、いずれにしても定期的な検査は欠かせません。
抗リウマチ薬はそのほかにもいろいろあります。状況によって使い分けをしますが、主に上記薬剤を使用しています。
■生物学的製剤
生物学的製剤は最先端のバイオテクノロジー技術によって生み出された医薬品で、関節リウマチに対しては2003年から国内での使用が開始されています。これまでの抗リウマチ薬に比べて薬剤費が非常に高価ですが、治療効果に優れています。リウマトレックスを中心とする従来の治療で病勢のコントロールが出来ない場合、出来るだけ早期に生物学的製剤を導入して関節破壊を防ぐという治療指針が国際的にも受け入れられています。
注意すべき副作用は感染症で、細菌性肺炎、結核などの肺病変には特に注意が必要です。投与前のスクリーニング検査が従来の抗リウマチ薬と比べて厳格に行われているため、 結核については当初予想されていたよりも少ない印象です。しかし生物学的製剤は強力な免疫抑制作用を持つため、免疫抑制下でリスクが高まる疾病であるニューモシスティス肺炎や細菌性肺炎を完全に避けることは難しく、頻度は少ないながらも発生することがあります。
抗TNFキメラ抗体 | 完全ヒト型可溶TNFα/LTα レセプター製剤 |
ヒト型抗ヒトTNFα モノクローナル抗体製剤 |
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薬品名 | レミケード | エンブレル | ヒュミラ |
一般名 | inflliximab | etanercept | adalimumab |
メーカー | 田辺三菱 | 武田/ファイザー | エーザイ/abbvie |
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投与方法 | 8週に1回 点滴1〜2時間 |
1〜2回/週 皮下注射(自己注射可能) |
1回/2週 皮下注射(自己注射可能) |
投与量 | 3mg/kg | 25mg〜50mg/週 | 40mg/2週 |
増 量 | 6mg/kgまで増量可能 あるいは4週間隔まで短縮可能 |
MTX非併用下で80mg/kgまで増量可能 | |
自己負担額 *通常使用量 での参考額 |
2ヶ月(3割負担) 約54,000円~ 約80,000円~ |
1ヶ月(3割負担) 25mg/週投与で: |
1ヶ月(3割負担) 40mg x 2/月で: 約39,000円 |
MTXの併用 | 必須 | 必須ではないが、併用で効果が高い | 必須ではないが、併用で効果が高い |
特 徴 | 効果が強く、効果発現も早い。 | 効果が強く、効果発現も比較的早い。半減期が短く投与中止が短期で可能。 | 効果が比較的強く、効果発現も比較的早い。 |
副作用 | 感染症、結核、B型肝炎の悪化、投与時反応 | 感染症、結核、B型肝炎の悪化 | 感染症、結核、B型肝炎の悪化 |
ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体 | ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体 | ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤 | |
薬品名 | アクテムラ | アクテムラ | シンポニー |
一般名 | tocilizumab | tocilizumab | golimumab |
メーカー | 中外 | 中外 | 田辺三菱 |
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投与方法 | 4週に1回 点滴1時間 |
1回/2週 皮下注射(自己注射可能) |
1回/4週 皮下注射 |
投与量 | 8mg/kg | 162mg/2週 | |
増 量 | MTX非併用下で | ||
自己負担額 *通常使用量 での参考額 |
1ヶ月(3割負担) 約27,000円〜 約32,000円〜 |
1ヶ月(3割負担) 162mg x 2/月投与で: 約23,000円 |
1ヶ月(3割負担) 50mg/月で: 約38,000円 |
MTXの併用 | 原則不要、併用も可能 | 原則不要、併用も可能 | 併用で効果が高い |
特 徴 | 効果は強いが、効果発現は比較的遅い。 | 効果は強いが、効果発現は比較的遅い。 | 効果が強く、効果発現も比較的早い。 |
副作用 | 感染症、結核、B型肝炎の悪化 感染に気づきにくい |
感染症、結核、B型肝炎の悪化 感染に気づきにくい |
感染症、結核、B型肝炎の悪化 |
T細胞選択的共刺激調節剤 | T細胞選択的共刺激調節剤 | TNFα阻害薬 | |
薬品名 | オレンシア | オレンシア | シムジア |
一般名 | abatacept | abatacept | Certolizumab pegol |
メーカー | ブリストルマイヤーズ/小野 | ブリストルマイヤーズ/小野 | アステラス/UCB |
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投与方法 | 4週に1回 点滴30分 |
1回/週 皮下注射(自己注射可能) |
1回/2週 皮下注射 |
投与量 | 60kg未満 500mg 100kg未満 750mg |
125mg/1回 | 200mg/1回 |
増 量 | 場合によっては半量の250mgの投与もあり | 投与開始時は400mgを2週間隔で3回投与 | |
自己負担額 *通常使用量 での参考額 |
1ヶ月(3割負担) 60kg未満: 約33,000円〜 |
1ヶ月(3割負担) 125mg x 4/月で: 約33,000円 |
1ヶ月(3割負担) 400mg/月で: 約38,000円 |
MTXの併用 | 原則不要、併用も可能 | 原則不要、併用も可能 | 必須ではないが、併用で効果アップ |
特 徴 | 効果は強く、効果発現も比較的早い。 | 効果は強く、効果発現も比較的早い。 | 効果が強く、効果発現も比較的早い。胎盤を通過しにくいので妊娠希望の女性に使用の可能性 |
副作用 | 感染症、結核、B型肝炎の悪化 | 感染症、結核、B型肝炎の悪化 | 感染症、結核、B型肝炎の悪化 |
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